そこにあるのは400年前の「江戸の歴史」

霞ヶ関遊歩道と呼ばれる歩道橋の下にひっそりと佇む石垣。溜池櫓台の一部が露出しています。

▲霞ヶ関遊歩道と呼ばれる歩道橋の下にひっそりと佇む石垣。溜池櫓台の一部が露出しています。

虎ノ門のあたりは、約160年前まで徳川将軍家の居城「江戸城」の一画で、虎ノ門という外郭の御門がありました。「虎ノ門」という名前の由来には諸説ありますが、江戸のまちづくりに採用された四神相応の「白虎」からきたと考えられています。


四神相応とは古代中国から伝わった思想のこと。4つの方角を司る獣神のうち、白虎は西を守護する神です。虎ノ門は江戸城内郭からは南の方位ですが、大手門から見ると西の方角にあたります。


写真の石垣は溜池櫓台。虎ノ門から続く石垣の隅部にあった櫓台石垣の一部だけが、江戸時代から変わらず今もひっそりと残っているのです。約160年前にはこの地に櫓や水堀があっただなんて、なんだか不思議ですよね。


さあ、道路を渡って反対側へ・・・文部科学省の敷地内でも石垣が見られるので行ってみましょう!

「上」をいくつ見つけられるかチャレンジしてみよう!

霞ヶ関コモンゲートのアネックス棟前の石垣。隣接する工部大学校阯碑が目印。

▲霞ヶ関コモンゲートのアネックス棟前の石垣。隣接する工部大学校阯碑が目印。

野外展示されている江戸城の石垣は全部で4ヶ所。そのうちの1ヶ所目が前段でご紹介した溜池櫓台石垣です。2ヶ所目は霞ヶ関コモンゲート前の生垣に隠れています。


石の表面をじっくり観察すると「上」の文字を発見!な、なんだ、上に行く秘密のスイッチなのか?いやいや実はこれ、約400年前の人が石材につけたマークです。このような石垣に彫られた符号を「刻印(こくいん)」と言います。


江戸城築城に要した期間はなんと約30年。幕府が全国の大名家に築城を手伝わせる「天下普請(公儀普請とも言う)」によって築かれました。戦で一時中断していた時期もありましたが、今から約400年前の江戸では、全国から人が集まり心血を注いで城造りをしていたのです。刻印は、その際大名家が自分の担当した丁場範囲を示すため境目に目印をつけたものでした。


ここの石垣には「上」という文字が5つあるので、ぜひ探してみてください。あなたは全部見つけられるかな?

旧文部省庁舎の中庭には「九」を発見!

登録有形文化財「旧文部省庁舎」と東館の間にある中庭。一般の人も見学することができます。

▲登録有形文化財「旧文部省庁舎」と東館の間にある中庭。一般の人も見学することができます。

3ヶ所目は旧文部省庁舎の中庭に展示されている長さ約33.5mの石垣。石材表面には、逆さになった「九」の文字をはじめ、いくつかの刻印が確認できます。「九」は、摂津三田藩・九鬼久隆の刻印。現在の兵庫県の方からもわざわざ来ていたのですね!


記録によると、虎ノ門から続く外堀の石垣は約30年の築城期間のうち、終盤にあたる寛永13(1636)年に築かれました。この時の石垣構築には61家の西国大名が普請を命じられ、さらに東国大名54家には堀の掘削が課せられたのです。

ラスボスきたー!地下鉄虎ノ門駅11出口には「初心者マーク」

地下鉄「虎ノ門駅」11出口すぐ。地上から石垣展示を見る場合はエスカレーターに乗っても良いですが、地下の展示スペースへは階段を登らないと辿り着けません。まるでダンジョンのようで面白い!

▲地下鉄「虎ノ門駅」11出口すぐ。地上から石垣展示を見る場合はエスカレーターに乗っても良いですが、地下の展示スペースへは階段を登らないと辿り着けません。まるでダンジョンのようで面白い!

東京メトロ虎ノ門駅から階段を登った先にある「江戸城外堀跡 地下展示室」では、当時の水堀水面の視点から石垣を見上げることができます。虎ノ門遺跡から発見された石垣の中で最大となる高さ7.4m、長さ20mが確認され、上部1mは失っていたものの、一部積み替えと解体修理を実施した上でお披露目されました。


石材表面を観察してみると、たくさんの初心者マークを見ることができます。このマークは「矢筈(やはず)」紋。ここを担当したのは豊後佐伯藩・毛利高直で、現在の大分県佐伯市を拠点にした大名です。石垣を近くで観察すると、こんなにも痕跡が残っているなんて面白いですよね!

地面や壁からわかる江戸城外堀の位置

(左)「江戸城外堀跡 地下展示室」の白と黒とで色が変わる壁タイル。黒色は、かつて江戸城外堀の水の中だった位置を示しています。(右)旧文部省庁舎の中庭にある石垣展示から霞ヶ関コモンゲートの石垣展示まで、石垣のラインに沿って地面に石垣断面が埋め込まれている

▲(左)「江戸城外堀跡 地下展示室」の白と黒とで色が変わる壁タイル。黒色は、かつて江戸城外堀の水の中だった位置を示しています。(右)旧文部省庁舎の中庭にある石垣展示から霞ヶ関コモンゲートの石垣展示まで、石垣のラインに沿って地面に石垣断面が埋め込まれている

このほか、野外展示された石垣の周辺では、当時の水堀水面位置がわかるよう壁の色を工夫したり、当時の石垣ラインに沿って地面タイルに石垣の断面をはめ込んだりと、ユニークなアイディアが散りばめられています。


私たちは、地面の上に立っているのではなく“歴史の上”に立っているんだと感じさせてくれるスポットですよね。大都会の中で、現代に残る江戸時代の痕跡を探してみてください!

虎ノ門駅(東京メトロ)
  • 所在地

    港区虎ノ門1-1-21

  • 最寄駅

    虎ノ門

  • 電話番号

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