国家プロジェクトで築かれた江戸を守る防衛施設

お台場海浜公園から眺める品川第三台場とレインボーブリッジ

▲お台場海浜公園から眺める品川第三台場とレインボーブリッジ

現在「皇居」がある場所には、かつて徳川将軍家の居城「江戸城」がありました。江戸時代が終焉を迎える嘉永6(1853)年6月、アメリカ東インド艦隊司令長官兼米使提督のマシュー・ペリーが4隻の黒船を率いて現れたのです。江戸を守るために対策をせねばと考えた幕府は、台場築造を開始。現在の貨幣価値で約700億円の総工費をかけた、国家プロジェクトがはじまりました!


計画当初の予定では、現在の北品川駅周辺〜新豊洲駅あたりまでの海上に11基+追加で1基の台場を築造する予定でしたが、財政難のため最終的に竣工したのはわずか6基。日米間で条約を結んだことにより、江戸が戦火に見舞われることもなくなり、江戸湾を守る抑止力としての役目を果たしたのです。


役目を終えた台場は、明治〜昭和の間に埋め立てや撤去工事が行われました。現在、見学できる史跡は第三台場のみです。

海を守る要塞、品川第三台場

(左)第三台場の海側方面の石垣。石垣上部のせり出しが特徴<br />
(右)干潮のタイミングでレインボーブリッジを歩いて渡ると、石垣前面に石畳のような石が確認できる。これが「張石」だ

▲(左)第三台場の海側方面の石垣。石垣上部のせり出しが特徴
(右)干潮のタイミングでレインボーブリッジを歩いて渡ると、石垣前面に石畳のような石が確認できる。これが「張石」だ

台場とは、来航する外国船に向けた大砲を置く「台」となる場所のこと。当時は「内海御台場」などと呼ばれていましたが、お台場という地名の由来はレインボーブリッジの下にあるこれらの要塞からきています。


ちなみに、品川台場はヨーロッパの築城書を参考にして設計されました。西洋技術は石垣でも確認することができ、上部のせり出しが特徴となる「刎出(はねだ)し」石垣は、同じく幕末に築かれた五稜郭(北海道)や龍岡城(長野県)などでも見られます。ねずみ返しのようになっていて登りにくいんです!一方、日本で培ってきた石垣構築技術も取り入れられているので、和洋両方の技術がミックスされ誕生した要塞ともいえそうですね。


また、品川第三台場の見学は、石垣の足元まで見られる干潮の時間帯がオススメです!海に土砂を埋め立て築いた品川台場では波が天敵。土砂が波で流出しないよう、石を張って抑えている工夫がうかがえます。この石畳のような石材を「張石」といい、この時代を生きた人々の知恵を見ることができるのです。

(左)火薬庫跡。写真中央は昭和の遺物、キャンプ場だった頃のかまど跡<br />
(右)もう一つの火薬庫跡。三方が土堤に囲まれている様子がわかる

▲(左)火薬庫跡。写真中央は昭和の遺物、キャンプ場だった頃のかまど跡
(右)もう一つの火薬庫跡。三方が土堤に囲まれている様子がわかる

台場の内部を見学してみましょう。


砲弾を飛ばすのに欠かせないものといえば、火薬。こちらは火薬庫跡です。建物は残っていませんが、当時は建物の周囲に土堤をめぐらして爆破事故に備えました。被弾に備え、2カ所に分散して格納されている点も、先人の知恵ですね!


なお、昭和38(1963)年発行の港区の冊子によると、キャンプ場として開設した歴史もあるそう!火薬庫跡にあるロケットのようなものは、品川第三台場がキャンプ場だった時代に使われていたかまどなんですよ。

(左上)台場の中央部が窪んでいる様子。写真手前の石は当時のストック用の石材だろう<br />
(右上)弾薬庫(玉薬置所)跡。木造の収納室は残っていないが石室が残っている<br />
(左下)砲座のレプリカ。この辺りの看板にQRコードがありARを楽しむことができる<br />
(右下)番士休息所跡。屋根は大砲が当たって二次被害がないように瓦ではなく芝が使われていた

▲(左上)台場の中央部が窪んでいる様子。写真手前の石は当時のストック用の石材だろう
(右上)弾薬庫(玉薬置所)跡。木造の収納室は残っていないが石室が残っている
(左下)砲座のレプリカ。この辺りの看板にQRコードがありARを楽しむことができる
(右下)番士休息所跡。屋根は大砲が当たって二次被害がないように瓦ではなく芝が使われていた

台場内には、ほかにも砲座(レプリカ)や弾薬庫(玉薬置所)跡といったここならではの施設があります。特に玉薬置所は、石室を造り、その中に木造の収納室を設ける二重管理の厳重な構造だったのです!


そういえば、品川台場で警備していた人達は誰だったのでしょうか?江戸城で働いていた幕府直属の家臣・・・ではなく、実は諸藩!第三台場の場合は、忍藩や高崎藩、宇和島藩の兵士が担当しています。第三台場では180人ほどが詰め、これを3交代制で回したそう。台場の中心部にある番士休息所は、故郷を離れて働く彼らが息つける場所だったのでしょう。

誰も立ち入れない島、実は・・・これも台場!

レインボーブリッジ中央の展望スポットから眺めた第六台場。この景色を見られるのは歩いて渡った人の特権

▲レインボーブリッジ中央の展望スポットから眺めた第六台場。この景色を見られるのは歩いて渡った人の特権

レインボーブリッジを歩いて渡ると、第三台場の西にもう一つ島があります。実はこれも現存する品川台場の一つ、「品川第六台場」。


しかし、見学できる相対保存の第三台場とは違い、原型のまま保存する絶対保存という手法が取られているため、誰も立ち入ることができません。まさに幻の要塞島・・・。お台場のシンボルともいえるレインボーブリッジの下に、こんな歴史が眠っているだなんて。なんてロマンチックなのでしょうか!

台場公園
  • 所在地

    港区台場1-10-1

  • 最寄駅

    お台場海浜公園

  • 電話番号

    03-5500-2455

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