建物目一杯に収まるド迫力な巨大木造船

超急斜面で三角形の形を成した奇抜な外観

▲超急斜面で三角形の形を成した奇抜な外観

今回紹介する博物館「都立第五福竜丸展示館」は、江東区にある夢の島公園内に位置しています。普段はバーベキューのお客さんでにぎわうほか、最寄りのJR新木場駅は、東京ディズニーランドの乗り換えに使う人も多い場所。


そのエリアに、巨大な木造船が展示されているとは、東京に暮らしている人々にもあまり知られてはいないでしょう。


第五福竜丸展示館の建物は、普段目にしないような珍しい形をした佇まい。何も知らずにこの建物を目の当たりにすると、ここに何があるんだろうと思ってしまうような不思議な外観ですね。

建物に目一杯収まる佇まいは、まさに圧巻の一言

▲建物に目一杯収まる佇まいは、まさに圧巻の一言

そして館内に入るとその迫力は絶大!


高さ15m、全長30mにもなる巨大木造船「第五福竜丸」がそのままの状態で保存されています。これは復元したものでもなく本物。これだけの巨大な木造船を間近で、さらには下から見上げる形で目にかかる機会は滅多にないありません。

このような金属板がいつ貼られたかは不明とのこと

▲このような金属板がいつ貼られたかは不明とのこと

迫力ある堂々とした佇まいではあるものの、間近で見る痛んだ部分が随所に見られ、とても驚かされます。被ばくから70年近くが経っていることもあり、木の板が欠けていたり、金属板を貼り付け応急処置をした跡があったりと、実に生々しい。

入館無料にもかかわらず展示内容はなかなかのボリューム

▲入館無料にもかかわらず展示内容はなかなかのボリューム

館内は木造船を中心に展示されており、周囲には第五福竜丸事件に関する史実について、パネルによる説明書きや関連する展示物が並んでいます。


扱っている内容としては放射能被ばく以外にも海の安全、環境問題、人権問題など切り口は多岐にわたっており、第五福竜丸事件という一つの事件からからさまざまな視点で学ぶことができます。

ガラス瓶に収められた本物の死の灰

第五福竜丸の大漁旗

▲第五福竜丸の大漁旗

改めて、第五福竜丸事件について触れましょう。


昭和29(1954)年3月、国連信託統治領だったマーシャル諸島ビキニ環礁で、水爆「ブラボー」の実験が行われました。この時、焼津港を出発してたまたま爆心地の近くを操業していたのが、遠洋マグロ漁船の第五福竜丸。期せずしてこの実験に巻き込まれ、強い放射能を帯びたサンゴ片の「死の灰」を浴びてしまったのです。


第五福竜丸に降り注いだサンゴ片

▲第五福竜丸に降り注いだサンゴ片

第五福竜丸には放射能を含んだサンゴ片が降り注ぎ、第五福竜丸に登場していた23名の乗組員は全員が被ばく。そのサンゴ片の一部は、今も館内にビン詰めの状態で残されています。

修学旅行先で訪れた学生たちからの千羽鶴

▲修学旅行先で訪れた学生たちからの千羽鶴

学校で習うほか、インターネットや書籍などで史実を知ることはできるものの、実際に施設に足を運び、関連する展示物などを通して学ぶと、より関心が湧くだけでなく自分ごととして捉えるようにもなると思います。


平和について考えるための貴重な施設であるゆえ、たくさんの修学旅行生が訪れており、中学生たちの千羽鶴も館内にたくさん飾られています。

日本中が悲しみに暮れた久保山さんの死

久保山さんの容体には日本国民から関心が寄せられていた

▲久保山さんの容体には日本国民から関心が寄せられていた

乗組員の話としては、乗組員の中でも最初の犠牲者であった久保山愛吉さんの話が当時は大変話題になったそうです。被ばくから半年が経った9月に、40歳の若さで亡くなりましたが、入院の様子はたびたびメディアで報じられ、激励の手紙も全国から届いたそうです。

全国から届いた久保山さんへの激励の手紙

▲全国から届いた久保山さんへの激励の手紙

後世に語り継ぎたい久保山さんの願い

▲後世に語り継ぎたい久保山さんの願い

「原水爆の被害者はわたしを最後にしてほしい」


同館のそばには、久保山さんが亡くなる前に残した言葉を刻んだ碑も残されています。こちらの碑も、訪問時にぜひ目に焼き付けていただければと思います。

ゴミ捨て場に捨てられていた第五福竜丸

不法放置として夢の島に捨てられていた第五福竜丸

▲不法放置として夢の島に捨てられていた第五福竜丸

館内には、第五福竜丸が江東区にて展示されている背景についての説明もありました。


この船はさまざまな経緯を辿っていたようであり、元々は和歌山県で竣工し、カツオ漁船だった船を改造してマグロ漁船「第五福竜丸」となり、被ばくした後は実習航海用の練習船を経て廃船処分となり夢の島公園に捨てられてしまいました。


その後、市民によって保存運動が行われ、最終的には東京都が組み上げる形で夢の島公園に展示。以上のような背景があって、ここ夢の島公園に展示されているんですね!

第五福竜丸事件から誕生した名作

さりげなくショップの棚に佇むゴジラ

▲さりげなくショップの棚に佇むゴジラ

館内のミュージアムショップの棚に目を向けると、紙製のゴジラが佇んでるのがわかります。ゴジラと第五福竜丸には深い関係があるんです。


実は、初代ゴジラは第五福竜丸事件に触発され、放射能の恐ろしさを体現する怪獣として誕生したキャラクター。近年では映画『ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナスワン)』が大ヒットするなど、誕生から70年経っても愛されていますよね。


学校の教科書で習ったであろう第五福竜丸。その巨大木造船は今も都心にそのままの状態で保存され、平和とは何かを私たちに問いかけています。ぜひ多くの人に訪れてほしいおすすめのスポットです!

第五福竜丸展示館
  • 所在地

    江東区夢の島2-1-1 夢の島公園内

  • 最寄駅

    新木場

  • 電話番号

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